概要1 当音楽院設立の背景とコンセプト、目標とすること
by エリック・オービエ

目次
・なぜフランストランペットの音楽院か
現状 分析 提案
・フレンチ・トランペット・スクールについて
・フレンチトランペットスクールに関する
個人的考察
・なぜエリック・オービエか
・当組織が提案すること
なぜフランストランペットの音楽院か:
■現状
日本はトランペット人口の多さにも関わらず、それ相応の奏者が輩出されていないように思われます…これはなぜでしょうか?
私はこの点について数年考えてきました。
日本には1.2億の人口があり、数えきれないほどの音楽家と、数多くのトランペット奏者がいます!そして毎年世界のトップオーケストラやソリストが訪れています。
私は 25年間毎年日本に来ており、多くの学生やプロフェッショナル奏者にお会してきました。その中で、多くの才能ある日本人や非凡な才能の持ち主の演奏を聞いてきました。フランスで日本人の学生も25年間教えていますが、その中には才能にあふれ可能性のある者もいます。
私は20年にわたりほぼ毎年、何らかの国際コンクールの審査員を務めています。稀な例外を除いて、主要なコンクールでは日本人の優勝者をまだ見ておりません。
私は30年にわたり世界中を飛び回っていますが、これまで欧米のオーケストラで日本人の首席トランペット奏者を見たことはまだありません。
■分析
日本は元来ドイツやアメリカに傾倒しており、主にオーケストラに焦点を置いていると思います。
一方フランスのトランペットは、素晴らしいソロ奏者を生み出すソロの流派だと認識されています。
しかし私は、フランスが才能あるソリストを多く「輩出している」という事実が、誤解を生んでいると思うのです…。
誤解はありませんか?ソリストとオーケストラ奏者とは矛盾するものでしょうか?メジャーオーケストラの首席奏者は皆、そのポジション獲得につながる価値のあるコンクールを受けてきています。そして彼らの多くは数多くのコンクールを経験しています。
誤解はありませんか?多くの素晴らしいソリストやオーケストラの首席奏者は、フランスで学んだことがありフランスのトランペットスクールに影響を受けています。
なぜ、日本はこの楽器のレベルアップを図ろうとしないのでしょうか?
なぜ、長年にわたって私のクラスでの良い要素は日本人なのでしょうか?
なぜ、そのような若い才能がひとたび国に帰るとトランペットをやめてしまうことになるのでしょうか?
日本は良い学生が競い合うように尽力しておらず、非常に多くの場合学生は海外へ出てしまっているように見えます。
しかし、皆がコンクールで勝つ演奏というものを知らなければなりません。
コンクールというものは我々のリミットを拡げ、発展していくために欠くことのできないものです。
トランペットのプロフェショナルというのは競争であり、高レベルのスポーツのようなものであり、なぜなら働く前には「勝つ」ことをなさなければならないのです。
■提案
フランストランペット音楽院により、私はこれらの問題への解決策を提案します:
- トランペット及び管楽器のフランス式教育の普及と促進
フランスが素晴らしいソリストを輩出しているならば、オーケストラ首席奏者も輩出している。(下記の例を参照)
- 日本の若い才能の援助とプロモーション
- コンクールで良い演奏をするためのマネージメントと鼓舞
- 教育法の導入
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●フレンチ・トランペット・スクール(エコール・フランセーズ):
フランスのトランペットスクールの遺産は、世界的に評価されています。
モーリス・アンドレがその代表であると考えられますが、それ以前にも、サバリッシュ・レイモン, ユージン・フォヴォ, ジャン=バティスト・アーバンらがフレンチスクールの名匠でした。
フレンチスクールは、世界の偉大なソリストを輩出してきました。広くは知られていませんが、現代のソリストやオーケストラ首席奏者の大半は、フランスで学んだことがあり、フランスの教師のもとで学んだことがあるのです。(ラインホルド・フリードリッヒ, ハカン・ハーデンバーガー, ウィントン・マルサリス, セルゲイ・ナカリィヤコフ, パチョ・フローレス、アレクサンドル・バティ 等。)そして全世界の我々の世代のトランペット奏者の99%は、モーリス・アンドレ に影響を受けてきたと言いました。
フランスに学んだオーケストラ奏者の例:台湾の主要オーケストラの首席トランペット奏者は、全員、フランスで私のクラスで学んだ者です。(ニコラ・ルスィロン、 杉木馨(例外的な日本人), ダヴィッド・アルジェンタ, モン・チュング・ホー等)
また、南アメリカ、アルゼンチン、コロンビア、ヴェネズエラ、チリ首席 オーケストラ首席奏者の多くはフランスでの私の生徒でした。
また、韓国人、ロシア人、アメリカ人、スペイン人、イギリス人、フランス人にも同様の例を見ることができます。そして、フランス放送響首席トランペット奏者であるアレクサンダー・バティ はブダペスト、プラハ、ミュンヘンでの国際コンクールの入勝者(ブダペスト、プラハ共に優勝、ミュンヘン第二位)であり、パリオペラ管の首席マルク・ジュジョンや ロマン・ルルは有望なキャリアを開始しました。
●フレンチ・トランペットスクールに関する個人的考察
フランストランッペット学派は19世紀中盤以降、世界中のトランペット奏者に影響を与えて来ました。この学派はフランスの歴史の中で生まれ、金管のみならず、木管楽器の分野でも大きく発展して来たのです。この学派は何よりもまず、我々フランス人の過去の記憶、特異性と楽器製作の果実として生まれたものです。
フランスの歴史は我々の国民的特徴を作り上げ、我々のあり方と個性形成を成熟させました。フランス管楽器学派の特徴はこのフランスの歴史と深く結びついているのです。フランス人の特性とも言える、私たちの肯定的な個人主義は我々の学派の特徴に大きく反映しています。
学派発展のもう一つの要素は、技術的な進歩です。新たなバルブシステムの開発はコルネットの登場を導きました。
フレンチトランペットスクールはまずコルネットがその象徴でした。その演奏のし易さ、音色の柔らかさや半音的機能性は、コルネットの名手を生むこととなりました。J.B.アーバンはその時代のまさに象徴的な人物であり、フランスのトランペットスクールを基礎としてついに彼の時代にコルネットでその基礎を築きました。
さらにバルブの技術が発展を遂げるのは20世紀でした。そしてそれは有名なフランスの作曲家がトランペットをうまく使って曲を生み出すことにつながっていきます。ドビュッシー、ラベル、ストラヴィンスキーなどがその例です。同時にフォヴォ、ヴァイアン、デルモット等のトランペットの名手たちの存在により、トランペットはオーケストラの枠から抜け出し、トマジ、ジョリヴェ、デザンクロなどにトランペット協奏曲を作曲させるきっかけを作りました。
やがてモーリス・アンドレがトランペット界に現れ、トランペットソリストとして世界中にその名を轟かせました。彼の登場により従来のトランペットのイメージが大きく変わり、以降彼に続くソリストの活躍の場を与えるきっかけとなりました。彼の世界的な成功によりフランストランペット学派の知名度は頂点に達しました。
今日では、バクリ、マタロンやエスケッシュ等の作曲家が我々フランス学派の伝統を引き継いでます。今後、私たちが見い出す才能ある若い奏者は将来活躍する可能性を持っています。
私はこの学派の教育を受けた者として、今後もこの伝統を支持し続けたいと思っております。私は更に今後、この学派が進化し、変容していくものだとも感じます。現代は様々な文化、人々が混ざり合った社会です。この学派が今後の進化、熟成を見守って行きたいのです。

■なぜエリック・オービエか:
モーリス・アンドレの遺志を直接受け継ぐ者である。
モーリス・アンドレは生前、私にフレンチトランペットスクールを世界に絶やさないようにしてほしいと私に言いました。私にとってその遺志の継続は、フレンチトランペット音楽院を日本で2016年より設立することです。
現在入手可能なフランストランペット音楽の大半を録音している人物である。年間平均2枚のCDを製作しており、ほとんどの場合うち1枚はフランスのレパートリーである。
30年以上の指導経験があり、現在のソリストの多くを輩出している。パチョ・フローレス, アレクサンドル・バティ、ダヴィド・ゲリエ、ロマン・ルル 等。
あまり知られてはいませんが、エリック・オービエは20年にわたりオーケストラの首席奏者を務めてきました。パリで5年間、パリオペラで20年間、そしてソロでの活動は40年間。12歳の時に初めてオーケストラとソロの共演をしました。
フランス楽曲の演奏においては世界的にも知られておりフランスを代表する国際ソリストである。
エリック・オービエ 経歴詳細:プロフィールのページをご参照ください。
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当組織の提案:
当音楽院は日本の音楽大学や高校で行われている指導に補完性を持たせる目的で何種類かの異なるクラスを設ける。
- オーケストラ(国内外)オーディション及び国際コンクールへの準備
- コンクールに向けての心理学的準備
- 大学レベル、及び小中高生レベルの音楽指導の仕方
- 現代楽器演奏上のテクニック及び楽曲レパートリーの向上・完成クラス
- 若い学習者の技術的習得クラス
- 来日中の海外著名プレイヤーによるマスタークラス
エリック・オービエ